2018年 3月 19日

  • 「かぼちゃの馬車」の供給過多で入居付けに苦戦

    2018.03.19

    今日は最近世間を賑わせていたシェアハウス・かぼちゃの馬車問題と私の実体験を重ねてお話しさせていただこうと思います。

    実は私もシェアハウスを運営していたことがあるので、このビジネスの難しさを痛感していました

    私がシェアハウスを運営しようと決意した時期が、ちょうどかぼちゃの馬車が物件を増やし始めていた2013年10月頃でした。私の場合、最初からシェアハウス運営に興味があったわけではありませんでした。

    2棟目に購入した物件の中に4LDKの広い部屋(旧々オーナーが住んでいた部屋)があり、この部屋がシロアリに侵されている報告を受けました。修繕見積費用は驚きの1100万円! さすがに通常のリフォームでこんなに大きな金額をかけても価値(家賃)を上げることは出来ないので、お金をかけるならば何か新しい価値を生み出せないか考えていました。

    どのリフォームをどのタイミングで実施すべきか考えているうちに、シロアリ問題により入居者が退去してしまい、すぐに手を打たなくてはいけない状況に追い込まれました。

    ターゲットはかぼちゃの馬車と同じ

    当時、東日本大震災から2年ほど経過していましたが、家族や友人との絆が重視され、「シェアハウス」が俄かに着目されていた時期でもありました。

    私も半分は社会貢献・半分はビジネスと考えて、4LDKのシロアリハウスを4部屋の女性専用のシェアハウスにリノベーションしました。収益性を考えるなら、4部屋ではなくもっと部屋を切り刻むことは出来たのですが、居心地が良い空間を作るためにリビングも15畳ほど残しました。

    顧客ターゲットは完全にかぼちゃの馬車と重なっていて、イメージしていたのは「地方から上京してくる単身者の女性」でした。十分なお金も持っていないでしょうし、そのような女性に住居を提供しようと考えました。

    完成後、1カ月もしないうちに満室にすることはできました。

    但し、入居者はターゲットとしていた地方から上京してくる女性ではなく、全員が社会人で、平均すると20代後半の年齢層になりました。1年ぐらいは安定していたのですが、1人退去。1カ月以内に次の入居者は決まったのですが、またすぐに次の退去者。普通のアパート経営に慣れていた私は、この動きの激しいシェアハウスの入退去に段々疲れてきました。

    シェアハウスに入居される方は、できるだけ家賃を抑えたい人が多く、私も初期費用をあまり取らずに募集していたこともあり、気軽に入居してくる分、簡単に出て行ってしまう傾向がありました。普通の賃貸アパート・マンションよりもシェアハウスの方が「仮住まい」という感覚が強いのでしょう。

    定期借家契約で1年更新という運用をしていましたが、1年の更新を迎える人の方が珍しく、それぐらいのペースで思った以上に人が入れ替わりました。そして、2016年6~7月に4部屋のうち3部屋がほぼ同時期に退去するという恐ろしい状況が発生しました。残った1人に原因があるのかとも思ったのですが、退去理由はさまざまで、偶然、同時期に退去が重なっただけでした。

    入居付けに苦戦

    そして、この3人の退去者のあと、次の入居者を決めるのが非常に大変でした。この頃からシェアハウスが飽和している感が出てきており、私の物件は川崎市にあったのですが、少なからず、都内にあるかぼちゃの馬車の供給過多の影響を受けたのだと思います。

    仲介業者経由でなかなか決まらず、さすがに焦り始めた私は、シェアハウスのポータルサイト「ひつじ不動産」で募集をかけはじめ、入居希望者からの連絡を直接受けるように切り替えました

    私が内覧の案内を実施し、直接入居希望者と顔合わせをすることで、その場で要望を受けて交渉した結果、9月~10月で3部屋を一気に埋めることが出来ました。内覧に来た人の成約率を一気に高めることが出来たのです。交渉内容は、家賃減額や保証会社の有無(保証会社ではなく連帯保証人で良いかどうかの判断)、フリーレントなどの組み合わせです。

    私が内覧案内まで実施出来たのは、私の住居から車で10分ぐらいのところに物件を購入したためですが、普通にサラリーマンをやりながらここまでやることは難しいと思います。

    任せられる業務は任せた方が良いですが、委任者のパフォーマンスが落ちてしまった時の挽回策は複数考えておきましょう。

    ちなみにシェアハウスのビジネスが本当に成り立つのか疑っていた私は、リノベーションする際に、普通の賃貸に戻せるようにという意味も含めて、過去の4LDKの間取りをほとんど変更せず各部屋に鍵だけ掛けられるようにしました

    また、定期借家契約を1年更新にしていた理由も、仮にシェアハウスのニーズが少なかった場合に1年後にファミリー用途に戻せるようにという思惑もありました。(通常、シェアハウスの定期借家契約は、入居者の中に問題児がいる時にその人を退去させやすくするためですが)

     

    このようにビジネスと社会貢献の両方を実現するためには、慎重な検討の上、進める必要がありますし、もし検討が不十分な場合は「元に戻せるようにする」もしくは失敗しても再起できるよう「小さく始める」ことを意識すると良いのかなと思います。

    結果的には昨年、このシェアハウスを含む一棟マンションを売却したため、その後のシェアハウスの運用状況は分かりません。ただ、通常賃貸を含むスペースマーケット業界はあっという間に供給過多に陥り、流行りすたりが激しく、参入するタイミングを誤ると大きな損失を被るリスクがあると実感しました。

    ついでに、言及しておくと、見かけの利回りを上げるのは以下の二つのやり方で簡単に実施できますので、しっかり見極めましょう。

    典型的な方法は、

    1.「空間を切り刻む(シェアハウスのように1部屋当たりの部屋を小さくする)」

    2.「時間を切り刻む」(マンスリー/ウィークリー貸しや、民泊のように1日単位で貸し出す)

    1は、入退去の頻度が激しいので、思った以上に手元にお金が残らないです。

    今回のシェアハウスのようなパターン以外にも、都内に1部屋10平米前後の新築アパートが乱立しているのが気になります。実は1棟、狭小アパートを買ってみたのですが、問題山積でした。次回、この話は詳しくさせていただきます。

    2の方がまだビジネスとしての可能性が残っていると思っています。外国人観光客の需要を取り込める成長産業だからです。

    しかし、

    ・エリアによっては供給過多気味

    ・購入時、融資も付きづらい

    など、気を付けるべき点があります。

    シェアハウスもそうでしたが、無理して融資を通して、一部の金融機関しか使えないようなスキームは、出口が限られてしまうので、まずは転貸等で実績を積んでいくのが賢いやり方かなと思います。

    いずれも通常の賃貸のような安定性はなく、売上が安定せずに年間を通して見極める必要があり、売上計画通りには進まないでしょう。

    失敗しないためには、一つは「表面利回り」に惑わされずに、手残りがいくらあるのかをしっかり精査すること。例えば宿泊業は代行費用・清掃費用・光熱費などを考慮すると、オーナーの手元に思った以上にお金が残りません。

    そして二つ目に、手残りを試算する時に「サブリース」を当てにしないこと。ある一社のサブリースに依存するモデルは非常に危険ですので、その業者が無くなってしまった場合、どんな策があるのか。この当たりを精査したうえで参入すべきかを決めましょう。

    不動産は「投資」ではなく「経営」ですので、「一回買ったらあとは配当金をもらう」という投資感覚でやり始めると失敗します。業界や競合の動きに注視しながら、参入の時期や場所を見極めましょう。

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